夏帆演じる主人公の女子高生、未歩があるビルの階段で地震が起きた瞬間に、携帯電話を落としたところ、その携帯電話が約百年前の明治時代にタイムスリップをしてしまう。そこで携帯電話を拾ったのが、小説家を志す、夏目漱石の弟子の宮田時次朗という名の青年だった。同様に地震が起きた瞬間に頭上から携帯電話が落ちてきた。
落とした携帯電話がタイムスリップしてしまったとは知らない未歩は、その携帯電話に電話を掛けてみる。一方、奇妙な箱を拾ってしまった時次朗は、突然その箱が鳴り出して驚く。適当に触っていたら、どこかのボタンを押したようで、途端にその箱の中から女性の声がした。未歩の「携帯電話」という説明を「けったいな電話」と聞き間違える。
電話は月の出た間しか通じない。月が雲に隠れてしまうと電波が切れてしまう。「アンテナがないのに明治時代に携帯電話が使用できるのか?」と突っ込んではいけない。そもそも、携帯電話がタイムスリップする時点で現実の世界とは違うのだ。こうして何度か話をするうちに未歩は時次朗に惹かれていった。
そんな二人は約百年の時間を隔てて、デートをする。日比谷公園の松本楼で同時(?)にカレーを食べ、銀座を歩く。今も百年前もある店を見つけ、時次朗はそこで未歩へのプレゼントを購入し、それを未歩が受け取りに行く。こんな時間差を利用した仕掛けが私は好きだ。お互いの顔を知ることなく、ただ声だけの関係だが、携帯電話なのだから、写メを送って、お互いの姿を見せるような展開があった方が、よりリアルな気がした。
エンディングは、過去において未来、運命を変えられるか?、という展開を見せる。なかなか良い映画だった。我が娘はこの映画を見て、涙したらしい。
<初出:秀コラム 第1623話>
2009年02月01日
2008年06月24日
転校生 さよならあなた
大林宣彦監督の映画作品を音楽の旋律に例えると、「マイナー」である。派手さやわくわく感はなく、しっとりとした感じの作品ばかりだ。嫌いじゃないけど、続けて何本も見ると気が滅入るに違いない。多分。
前作「転校生」のリリースから25年ぶりに転校生がリメイクされた。ただ前回の作品とは違い「さよならあなた」というサブタイトルが付いている。今回DVDでこの新作を見た。私のように前作をリアルタイムに見た世代からすると、前作を原点として今回の作品を比較してしまう。新作はその舞台が尾道ではなく、信州・長野になっている。このため、両作品を「尾道転校生」、「長野転校生」と区別して呼ぶらしい。
今回の作品も前半はほとんど前作と同じで、斉藤一夫が転校してきたクラスにかつての幼なじみ斉藤一美がいる。この二人が入れ替わり、男が女に、女が男になるところも一緒だ。しかし、二人が入れ替わった状態のときに一美の体が難病に冒されている事が分かる。一美の体となった一夫が死んでいくのか?。
「転校生」の主人公は二人となっているが、やはり主演は(外観上の)一美だと思う。かつては小林聡美が演じ、今回は蓮佛美沙子が演じる。前作に比べてかなりの美形である。一方、前作尾見としのりが演じた一夫は今回やや影が薄かった。
私的には前作のあの二人がその後どうなったのか?、大人になって再び会ったりしたのか?、もしかして二人が結婚してくれていたら嬉しいなあ、と思ったりして、そんなサイドストーリーを新転校生に加えてくれていたら良かったのに、そんなシーンはなかった。
前作では最後の一夫がまた引っ越して行くシーンに、元に戻った一美がちょっとかわいく見えたところが印象的だったが、今回はちょっと釈然としない終わり方をした。
<初出:秀コラム 第1519話>
前作「転校生」のリリースから25年ぶりに転校生がリメイクされた。ただ前回の作品とは違い「さよならあなた」というサブタイトルが付いている。今回DVDでこの新作を見た。私のように前作をリアルタイムに見た世代からすると、前作を原点として今回の作品を比較してしまう。新作はその舞台が尾道ではなく、信州・長野になっている。このため、両作品を「尾道転校生」、「長野転校生」と区別して呼ぶらしい。
今回の作品も前半はほとんど前作と同じで、斉藤一夫が転校してきたクラスにかつての幼なじみ斉藤一美がいる。この二人が入れ替わり、男が女に、女が男になるところも一緒だ。しかし、二人が入れ替わった状態のときに一美の体が難病に冒されている事が分かる。一美の体となった一夫が死んでいくのか?。
「転校生」の主人公は二人となっているが、やはり主演は(外観上の)一美だと思う。かつては小林聡美が演じ、今回は蓮佛美沙子が演じる。前作に比べてかなりの美形である。一方、前作尾見としのりが演じた一夫は今回やや影が薄かった。
私的には前作のあの二人がその後どうなったのか?、大人になって再び会ったりしたのか?、もしかして二人が結婚してくれていたら嬉しいなあ、と思ったりして、そんなサイドストーリーを新転校生に加えてくれていたら良かったのに、そんなシーンはなかった。
前作では最後の一夫がまた引っ越して行くシーンに、元に戻った一美がちょっとかわいく見えたところが印象的だったが、今回はちょっと釈然としない終わり方をした。
<初出:秀コラム 第1519話>
2008年06月01日
赤い文化住宅の初子
映画館で公開されていたときにちょっと気になる作品だったが、結局映画館で見ることができず、気がついたらレンタルショップにDVDが並んでいるのでそれを借りて、ようやく見ることができた。
文化住宅という言葉を辞書で調べてみたら、「玄関付きの木造二階建てアパート」とあった。文化という高尚で先進的なイメージの言葉とは裏腹に、今となっては古い安アパートを指す言葉といえる。そのタイトルが示す安アパートに住む貧乏な中学3年生の少女初子が主人公である。中学生ながら中華屋でバイトするが、あえなくクビになる。
彼女は高校を中退した兄と二人で暮らしている。父は昔、借金を残して蒸発し、母は過労により死んでしまった。唯一の肉親である兄はろくでもない男で、酒と風俗に金をつぎ込んでしまうし、粗暴で勤務先の工場でケンカをしてそこをクビになる。生活費にも手をつけ、支払いが滞って電気を止められてしまう。彼女は高校受験を控えているが、兄の甲斐性もなく、就職を余儀なくされる。私はこれほど薄幸な少女の映画やドラマを見たことがない。(難病ものを除いて)
この映画のテーマは純愛である。常に彼女を励まし、一緒に同じ高校へ行こうと勉強まで教えてくれる三島という少年に好意を感じ、三島も彼女に好意を持っている。だが、プラトニックだ。彼は高校に進み、彼女は菓子工場に就職をするが、お互いの気持ちは変わらず、将来の結婚を誓い合う。このことが唯一、彼女の心の支えであろう。
その頃、自分たちを捨てて出て行った父親が、浮浪者となって突然姿を現す。兄と父親はここで激しくぶつかり合い、話は突然予想もできなかった展開を見せる。兄は昔の馴染みを頼って、大阪に出て行くと言い(話の舞台は広島)、仕方なく、初子も一緒について行くことになる。
これといった見どころがあるわけでもなく、ハラハラドキドキするような要素はない映画だが、そのリアル感に妙な切なさがある。かと言って泣けるわけでもない。願わくば将来、彼女には三島君と一緒になって幸せになって欲しい、そんなことを思う映画だ。作品自体は秀作。
<初出:秀コラム 第1509話>
文化住宅という言葉を辞書で調べてみたら、「玄関付きの木造二階建てアパート」とあった。文化という高尚で先進的なイメージの言葉とは裏腹に、今となっては古い安アパートを指す言葉といえる。そのタイトルが示す安アパートに住む貧乏な中学3年生の少女初子が主人公である。中学生ながら中華屋でバイトするが、あえなくクビになる。
彼女は高校を中退した兄と二人で暮らしている。父は昔、借金を残して蒸発し、母は過労により死んでしまった。唯一の肉親である兄はろくでもない男で、酒と風俗に金をつぎ込んでしまうし、粗暴で勤務先の工場でケンカをしてそこをクビになる。生活費にも手をつけ、支払いが滞って電気を止められてしまう。彼女は高校受験を控えているが、兄の甲斐性もなく、就職を余儀なくされる。私はこれほど薄幸な少女の映画やドラマを見たことがない。(難病ものを除いて)
この映画のテーマは純愛である。常に彼女を励まし、一緒に同じ高校へ行こうと勉強まで教えてくれる三島という少年に好意を感じ、三島も彼女に好意を持っている。だが、プラトニックだ。彼は高校に進み、彼女は菓子工場に就職をするが、お互いの気持ちは変わらず、将来の結婚を誓い合う。このことが唯一、彼女の心の支えであろう。
その頃、自分たちを捨てて出て行った父親が、浮浪者となって突然姿を現す。兄と父親はここで激しくぶつかり合い、話は突然予想もできなかった展開を見せる。兄は昔の馴染みを頼って、大阪に出て行くと言い(話の舞台は広島)、仕方なく、初子も一緒について行くことになる。
これといった見どころがあるわけでもなく、ハラハラドキドキするような要素はない映画だが、そのリアル感に妙な切なさがある。かと言って泣けるわけでもない。願わくば将来、彼女には三島君と一緒になって幸せになって欲しい、そんなことを思う映画だ。作品自体は秀作。
<初出:秀コラム 第1509話>
2008年05月04日
うた魂(たま)♪
「うた魂(たま)♪」という名の映画である。北海道の高校の合唱部を舞台にしている。「スウィングガールズ」の合唱バージョンといった感じだろう。主演は夏帆である。彼女が通う高校の合唱部は合唱の全国大会の常連である。歌がうまく、自己陶酔型の主人公はそこでソプラノのパートリーダーを務めていたがあることをきっかけに合唱をやめてしまう。しかし、そんなときに出会った不良学生、だけど礼儀正しい権藤(ガレッジセール ゴリ)らが歌う、魂のこもったソウルフルな「15の夜」に心を動かされ、再び合唱へと戻っていく。
歌うこととは何か?、歌うことのすばらしさとは?、を問いかけてくる。それに対し、技巧的なうまさではなく、相手のソウルに訴えかけることが重要だと、権藤の口を突いてそう主張してくる。権藤は3年前に路上で尾崎を歌う女性に魅せられて、仲間達を集め、合唱部を結成していた。そしてソウルにひたすらこだわる。
最後は全国大会への予選会である。権藤らも予選に出場しようと会場に来たが、その髪形と服装から主催者が出場を許可しない。まあ、ここから先の記述は控えるが、そのままでは映画のストーリーは続かないので、どうなったかの想像はたやすいことだろう。
そして主人公の高校の出番。ピアノ伴奏が始まったところで早くも鳥肌が立った。出演者の緊張感と会場の雰囲気が映画でありながらリアルに伝わってきたからだ。見事な合唱だった。主人公はこうして歌うことの楽しさを改めて実感した。
キャスティング上の私のおすすめは合唱部部長、楓を演じる亜希子である。特に華のある存在ではないが、ちょっと気が強い感じの合唱部の部長として、いかにもリアルにいそうな感じが良い。これからの彼女の活躍に期待したい。
基本的に私は青春映画に対して甘い。しかし、その分を差し引いても良い映画と言える。既に公開を終了したところが多そうなので、DVDになった際にでも鑑賞されることをお薦めしたい。
<初出:秀コラム 第1491話 加筆修正>
2008年04月20日
四月物語
新作でなくて恐縮だが、この時期にあわせた「日本映画も結構良いじゃない」、という作品の話を一つ。タイトルは「四月物語」。主演は松たか子。大学の進学のために北海道から上京して来た女性の物語である。その大学を選んだ基準、アパートを決めた基準が高校のときに憧れていた先輩(田辺誠一)に会うためということだった。
桜の花びらが散る中をトラックが走り、彼女が引っ越して来るシーンが最初の方に出てくる。新しき生活、しかも先輩に会えるかもしれないという期待感が彼女の嬉々とした表情で表現されている。彼女の身の回りは新鮮なものであふれている。その日常がリアルに描かれている。桜の花びらが散るシーン、そして後半は雨の中に開く彼女の赤い傘。非常に美しい映像である。正味60数分と冗長的な部分も少ない。
憧れの先輩とは彼がバイトをしている本屋で出会える。好きな人と会った瞬間のそのドキドキ感、そのときの感情をあなたはまだ覚えているだろうか?。この映画の見どころはまさにここにある。そこを楽しむべし。春はそんな季節。