映画「崖の上のポニョ」を公開日の翌日に小2の末娘と見に行った。これまで私はスタジオジブリ作品をちゃんと見たことがなかった。テレビで放送された際に部分部分を見ることはあっても、全体をじっくりと見ることはなかった。
さて今回の新作についてだが、はっきり言って「よく分からない」映画だった。頭を使って合理的に考えようとすればするほど、論理的な合理性を見出すことができない。おそらくこれはこの作品に限らず、ジブリ作品に共通しているのではなかろうか、と思う。
まず、登場人物の設定が分からない。人間は分かる。主人公の少年とその母親、それに航海士の父親とこれらはすっきりしている。一方、海の中に住む魔法使いの男が何なのか分からない。そして後半に出てくる女神らしい存在も意味が分からない。そして何より、ポニョの存在が謎である。
ポニョは魚の子らしいが、途中から人間の形になる。人魚姫とピノキオが合体したようなストーリー構成である。ところで、この映画のテーマが果たしてなんだったのかは未だに分からない。娘は「面白かった」と言っているが、アニメーションとしての絵の動きが面白かったのかも知れないし、ポニョの動きが面白かったのかもしれない。それとも子ども達には何かしらのメッセージが届いたのだろうか?。
あの頭に残る主題歌は映画の最後に流れる。見終わった後、子ども達は口々に「面白かった」などと語っていたが、大人達の多くの顔には「?」のマークが付いていた。この程度なら、レンタルでよかったかな。
<初出:秀コラム 第1548話>
2008年08月06日
2008年06月24日
転校生 さよならあなた
大林宣彦監督の映画作品を音楽の旋律に例えると、「マイナー」である。派手さやわくわく感はなく、しっとりとした感じの作品ばかりだ。嫌いじゃないけど、続けて何本も見ると気が滅入るに違いない。多分。
前作「転校生」のリリースから25年ぶりに転校生がリメイクされた。ただ前回の作品とは違い「さよならあなた」というサブタイトルが付いている。今回DVDでこの新作を見た。私のように前作をリアルタイムに見た世代からすると、前作を原点として今回の作品を比較してしまう。新作はその舞台が尾道ではなく、信州・長野になっている。このため、両作品を「尾道転校生」、「長野転校生」と区別して呼ぶらしい。
今回の作品も前半はほとんど前作と同じで、斉藤一夫が転校してきたクラスにかつての幼なじみ斉藤一美がいる。この二人が入れ替わり、男が女に、女が男になるところも一緒だ。しかし、二人が入れ替わった状態のときに一美の体が難病に冒されている事が分かる。一美の体となった一夫が死んでいくのか?。
「転校生」の主人公は二人となっているが、やはり主演は(外観上の)一美だと思う。かつては小林聡美が演じ、今回は蓮佛美沙子が演じる。前作に比べてかなりの美形である。一方、前作尾見としのりが演じた一夫は今回やや影が薄かった。
私的には前作のあの二人がその後どうなったのか?、大人になって再び会ったりしたのか?、もしかして二人が結婚してくれていたら嬉しいなあ、と思ったりして、そんなサイドストーリーを新転校生に加えてくれていたら良かったのに、そんなシーンはなかった。
前作では最後の一夫がまた引っ越して行くシーンに、元に戻った一美がちょっとかわいく見えたところが印象的だったが、今回はちょっと釈然としない終わり方をした。
<初出:秀コラム 第1519話>
前作「転校生」のリリースから25年ぶりに転校生がリメイクされた。ただ前回の作品とは違い「さよならあなた」というサブタイトルが付いている。今回DVDでこの新作を見た。私のように前作をリアルタイムに見た世代からすると、前作を原点として今回の作品を比較してしまう。新作はその舞台が尾道ではなく、信州・長野になっている。このため、両作品を「尾道転校生」、「長野転校生」と区別して呼ぶらしい。
今回の作品も前半はほとんど前作と同じで、斉藤一夫が転校してきたクラスにかつての幼なじみ斉藤一美がいる。この二人が入れ替わり、男が女に、女が男になるところも一緒だ。しかし、二人が入れ替わった状態のときに一美の体が難病に冒されている事が分かる。一美の体となった一夫が死んでいくのか?。
「転校生」の主人公は二人となっているが、やはり主演は(外観上の)一美だと思う。かつては小林聡美が演じ、今回は蓮佛美沙子が演じる。前作に比べてかなりの美形である。一方、前作尾見としのりが演じた一夫は今回やや影が薄かった。
私的には前作のあの二人がその後どうなったのか?、大人になって再び会ったりしたのか?、もしかして二人が結婚してくれていたら嬉しいなあ、と思ったりして、そんなサイドストーリーを新転校生に加えてくれていたら良かったのに、そんなシーンはなかった。
前作では最後の一夫がまた引っ越して行くシーンに、元に戻った一美がちょっとかわいく見えたところが印象的だったが、今回はちょっと釈然としない終わり方をした。
<初出:秀コラム 第1519話>
2008年06月19日
夜の上海
日中合作映画で日本での配給元は松竹。タイトルが示すとおり、上海を舞台にした話である。しかも、日本映画には珍しい、一夜を対象にした話である。邦画では時間経過が結構経ってしまう映画がほとんどである。
主演は本木雅弘。カリスマヘアメイクアーティストで、音楽祭出演者のメイク担当として招聘され、上海にやってきた水島を演じている。一方、主演女優はヴィッキー・チャオ演じるリンシーというタクシー運転手。私はアジア系の映画は見ないので、ヴィッキー・チャオがどんな人なのか知らないが、「少林サッカー」に出ていたらしい。中国では大人気のタレントらしい。日本人に例えると、目がパッチリした中越典子といった感じだろうか。
水島は登りつめた今の状況に何か空虚な満たされない思いを抱いている。恋人でマネージャーの美帆(西田尚美)との中も、分かれ道に差し掛かっていた。一方、リンシーはタクシー運転手として日銭を稼ぐ生活をしている。親はなく、弟と二人暮しをしている。彼女の心の支えは片思いの親友ドンドンとの結婚を夢見ることだった。
音楽祭会場での仕事が終わった水島は何に誘われるでもなく、財布も何も持たずに一人ふらりと街に出た。裏通りに入ると、二胡を弾いている人がいたりと、大通りの喧騒とは一転してしまう。そして水島は道に迷ってしまった。そんなところに、乱暴な運転のリンシーが現れ、水島を後ろから、はね飛ばしてしまう。リンシーは水島を「送るから」とタクシーに無理やり乗せるがお互い言葉が通じない。リンシーは英語もほとんど話せない。おまけに水島はホテルの名前も覚えていないので、行き先が分からない。
そんなとき、リンシーの携帯電話が鳴った。片思いのドンドンからである。彼は「明日結婚することになった」と言う。もちろん、リンシーではなく、別の女性とである。リンシーは気が動転し、「おめでとう」の言葉も出てこない。一番の親友で一番分かり合えてる同士と思っていたのに。
行き先のないタクシーは、夜の上海をひたすら走る。上海のエネルギーを感じる。美しい上海の夜景と、それに映画館では、音が良いので、街の雑踏感がサラウンドで伝わってくる。途中、雨が降り出し、雷が落ちるシーンでは突然なことと大音量でのリアルさに驚いた。
この映画のテーマは「切なさ」だと思う。ドンドンからの電話を受けたリンシーは、ドンドンに会うために職場である自動車修理工場を訪ねるが、既に彼は帰った後だった。そして、結婚式の衣装合わせをしている二人の姿を遠目に見て、涙を流す。一番の親友で一番分かり合えてる同士と思っていたのに。ただ一言、「好きだ」、「愛してる」と言えなかったばっかりに。彼女の切なさ、よく分かる。
DVDのレンタルもリリースされた。美しい上海の夜景と切なさに接してみてはいかがだろうか?。
<初出:秀コラム 第1360話>
主演は本木雅弘。カリスマヘアメイクアーティストで、音楽祭出演者のメイク担当として招聘され、上海にやってきた水島を演じている。一方、主演女優はヴィッキー・チャオ演じるリンシーというタクシー運転手。私はアジア系の映画は見ないので、ヴィッキー・チャオがどんな人なのか知らないが、「少林サッカー」に出ていたらしい。中国では大人気のタレントらしい。日本人に例えると、目がパッチリした中越典子といった感じだろうか。
水島は登りつめた今の状況に何か空虚な満たされない思いを抱いている。恋人でマネージャーの美帆(西田尚美)との中も、分かれ道に差し掛かっていた。一方、リンシーはタクシー運転手として日銭を稼ぐ生活をしている。親はなく、弟と二人暮しをしている。彼女の心の支えは片思いの親友ドンドンとの結婚を夢見ることだった。
音楽祭会場での仕事が終わった水島は何に誘われるでもなく、財布も何も持たずに一人ふらりと街に出た。裏通りに入ると、二胡を弾いている人がいたりと、大通りの喧騒とは一転してしまう。そして水島は道に迷ってしまった。そんなところに、乱暴な運転のリンシーが現れ、水島を後ろから、はね飛ばしてしまう。リンシーは水島を「送るから」とタクシーに無理やり乗せるがお互い言葉が通じない。リンシーは英語もほとんど話せない。おまけに水島はホテルの名前も覚えていないので、行き先が分からない。
そんなとき、リンシーの携帯電話が鳴った。片思いのドンドンからである。彼は「明日結婚することになった」と言う。もちろん、リンシーではなく、別の女性とである。リンシーは気が動転し、「おめでとう」の言葉も出てこない。一番の親友で一番分かり合えてる同士と思っていたのに。
行き先のないタクシーは、夜の上海をひたすら走る。上海のエネルギーを感じる。美しい上海の夜景と、それに映画館では、音が良いので、街の雑踏感がサラウンドで伝わってくる。途中、雨が降り出し、雷が落ちるシーンでは突然なことと大音量でのリアルさに驚いた。
この映画のテーマは「切なさ」だと思う。ドンドンからの電話を受けたリンシーは、ドンドンに会うために職場である自動車修理工場を訪ねるが、既に彼は帰った後だった。そして、結婚式の衣装合わせをしている二人の姿を遠目に見て、涙を流す。一番の親友で一番分かり合えてる同士と思っていたのに。ただ一言、「好きだ」、「愛してる」と言えなかったばっかりに。彼女の切なさ、よく分かる。
DVDのレンタルもリリースされた。美しい上海の夜景と切なさに接してみてはいかがだろうか?。
<初出:秀コラム 第1360話>
2008年06月09日
アフタースクール
「アフタースクール」という名の映画の話。この映画は3人の俳優が主人公だ。順に、大泉洋、佐々木蔵之介、堺雅人。大泉が母校で働く中学校教師(神野)で、佐々木が裏家業の探偵(自称・島崎)。そして堺が一流企業の社員(木村)という役どころだ。神野と木村は中学校のときの同級生で、今も近所に暮らして親しく付き合っている。
そんなある日、木村がある女性と姿を消してしまう。その女性がヤクザの女だと思われ、木村が勤める会社の社長の使いが木村とこの女を捜すように島崎のところに依頼に現れた。裏家業の探偵である。カタギの探偵には頼めない理由がある。島崎は木村について情報収集を行うが、生活基盤が学生の頃から変わっていないことに注目し、中学校などの同窓会に探りを入れる一方、卒業アルバムから友人情報などを仕入れようと、直に学校に乗り込んいく。
職員室で「何期生?」と聞かれ、木村が在籍していた「14期生」と島崎が答えたところ、「じゃあ、神野先生と同じですね」ということで、通りかかった神野に引き合わされた島崎。嘘の同級生であることがばれてはいけないと、そのまま同級生であったことを演じるしかない。そして島崎が神野に木村のことを問いかけると、近くに住んでいて、今も親しいことを告げる。
そこで島崎は神野に木村が失踪した日に撮影された、ある女性と親しく写った写真を見せ、木村探しへの協力を求める。木村のことが心配なので行きがかり上、木村探しに付き合うしかない神野。当初は妻が妊娠中の浮気かと思われたが、その写真の女性は神野がよく知っている女性だった。これで神野は島崎が偽の同級生だと気が付くが、その気づいたことが島崎には分からないような振りをして、島崎に付き合う。
捜索の途中であるヤクザ組織と木村が勤める会社が裏でつながっていることが明らかになる。そのことに木村の失踪がどうやら関係しているであろうことも分かる。そして話は大きく予想していない方向に展開し、木村も無事に戻ってくるが、その一方で、大物政治家を巻き込んだ犯罪を明らかにするまでにいたる。
テンポ良い展開と大どんでん返しで、あっと言う間にエンディングを迎えていた。面白い映画だった。
<初出:秀コラム 第1514話>
そんなある日、木村がある女性と姿を消してしまう。その女性がヤクザの女だと思われ、木村が勤める会社の社長の使いが木村とこの女を捜すように島崎のところに依頼に現れた。裏家業の探偵である。カタギの探偵には頼めない理由がある。島崎は木村について情報収集を行うが、生活基盤が学生の頃から変わっていないことに注目し、中学校などの同窓会に探りを入れる一方、卒業アルバムから友人情報などを仕入れようと、直に学校に乗り込んいく。
職員室で「何期生?」と聞かれ、木村が在籍していた「14期生」と島崎が答えたところ、「じゃあ、神野先生と同じですね」ということで、通りかかった神野に引き合わされた島崎。嘘の同級生であることがばれてはいけないと、そのまま同級生であったことを演じるしかない。そして島崎が神野に木村のことを問いかけると、近くに住んでいて、今も親しいことを告げる。
そこで島崎は神野に木村が失踪した日に撮影された、ある女性と親しく写った写真を見せ、木村探しへの協力を求める。木村のことが心配なので行きがかり上、木村探しに付き合うしかない神野。当初は妻が妊娠中の浮気かと思われたが、その写真の女性は神野がよく知っている女性だった。これで神野は島崎が偽の同級生だと気が付くが、その気づいたことが島崎には分からないような振りをして、島崎に付き合う。
捜索の途中であるヤクザ組織と木村が勤める会社が裏でつながっていることが明らかになる。そのことに木村の失踪がどうやら関係しているであろうことも分かる。そして話は大きく予想していない方向に展開し、木村も無事に戻ってくるが、その一方で、大物政治家を巻き込んだ犯罪を明らかにするまでにいたる。
テンポ良い展開と大どんでん返しで、あっと言う間にエンディングを迎えていた。面白い映画だった。
<初出:秀コラム 第1514話>
2008年06月01日
赤い文化住宅の初子
映画館で公開されていたときにちょっと気になる作品だったが、結局映画館で見ることができず、気がついたらレンタルショップにDVDが並んでいるのでそれを借りて、ようやく見ることができた。
文化住宅という言葉を辞書で調べてみたら、「玄関付きの木造二階建てアパート」とあった。文化という高尚で先進的なイメージの言葉とは裏腹に、今となっては古い安アパートを指す言葉といえる。そのタイトルが示す安アパートに住む貧乏な中学3年生の少女初子が主人公である。中学生ながら中華屋でバイトするが、あえなくクビになる。
彼女は高校を中退した兄と二人で暮らしている。父は昔、借金を残して蒸発し、母は過労により死んでしまった。唯一の肉親である兄はろくでもない男で、酒と風俗に金をつぎ込んでしまうし、粗暴で勤務先の工場でケンカをしてそこをクビになる。生活費にも手をつけ、支払いが滞って電気を止められてしまう。彼女は高校受験を控えているが、兄の甲斐性もなく、就職を余儀なくされる。私はこれほど薄幸な少女の映画やドラマを見たことがない。(難病ものを除いて)
この映画のテーマは純愛である。常に彼女を励まし、一緒に同じ高校へ行こうと勉強まで教えてくれる三島という少年に好意を感じ、三島も彼女に好意を持っている。だが、プラトニックだ。彼は高校に進み、彼女は菓子工場に就職をするが、お互いの気持ちは変わらず、将来の結婚を誓い合う。このことが唯一、彼女の心の支えであろう。
その頃、自分たちを捨てて出て行った父親が、浮浪者となって突然姿を現す。兄と父親はここで激しくぶつかり合い、話は突然予想もできなかった展開を見せる。兄は昔の馴染みを頼って、大阪に出て行くと言い(話の舞台は広島)、仕方なく、初子も一緒について行くことになる。
これといった見どころがあるわけでもなく、ハラハラドキドキするような要素はない映画だが、そのリアル感に妙な切なさがある。かと言って泣けるわけでもない。願わくば将来、彼女には三島君と一緒になって幸せになって欲しい、そんなことを思う映画だ。作品自体は秀作。
<初出:秀コラム 第1509話>
文化住宅という言葉を辞書で調べてみたら、「玄関付きの木造二階建てアパート」とあった。文化という高尚で先進的なイメージの言葉とは裏腹に、今となっては古い安アパートを指す言葉といえる。そのタイトルが示す安アパートに住む貧乏な中学3年生の少女初子が主人公である。中学生ながら中華屋でバイトするが、あえなくクビになる。
彼女は高校を中退した兄と二人で暮らしている。父は昔、借金を残して蒸発し、母は過労により死んでしまった。唯一の肉親である兄はろくでもない男で、酒と風俗に金をつぎ込んでしまうし、粗暴で勤務先の工場でケンカをしてそこをクビになる。生活費にも手をつけ、支払いが滞って電気を止められてしまう。彼女は高校受験を控えているが、兄の甲斐性もなく、就職を余儀なくされる。私はこれほど薄幸な少女の映画やドラマを見たことがない。(難病ものを除いて)
この映画のテーマは純愛である。常に彼女を励まし、一緒に同じ高校へ行こうと勉強まで教えてくれる三島という少年に好意を感じ、三島も彼女に好意を持っている。だが、プラトニックだ。彼は高校に進み、彼女は菓子工場に就職をするが、お互いの気持ちは変わらず、将来の結婚を誓い合う。このことが唯一、彼女の心の支えであろう。
その頃、自分たちを捨てて出て行った父親が、浮浪者となって突然姿を現す。兄と父親はここで激しくぶつかり合い、話は突然予想もできなかった展開を見せる。兄は昔の馴染みを頼って、大阪に出て行くと言い(話の舞台は広島)、仕方なく、初子も一緒について行くことになる。
これといった見どころがあるわけでもなく、ハラハラドキドキするような要素はない映画だが、そのリアル感に妙な切なさがある。かと言って泣けるわけでもない。願わくば将来、彼女には三島君と一緒になって幸せになって欲しい、そんなことを思う映画だ。作品自体は秀作。
<初出:秀コラム 第1509話>
2008年05月04日
うた魂(たま)♪
「うた魂(たま)♪」という名の映画である。北海道の高校の合唱部を舞台にしている。「スウィングガールズ」の合唱バージョンといった感じだろう。主演は夏帆である。彼女が通う高校の合唱部は合唱の全国大会の常連である。歌がうまく、自己陶酔型の主人公はそこでソプラノのパートリーダーを務めていたがあることをきっかけに合唱をやめてしまう。しかし、そんなときに出会った不良学生、だけど礼儀正しい権藤(ガレッジセール ゴリ)らが歌う、魂のこもったソウルフルな「15の夜」に心を動かされ、再び合唱へと戻っていく。
歌うこととは何か?、歌うことのすばらしさとは?、を問いかけてくる。それに対し、技巧的なうまさではなく、相手のソウルに訴えかけることが重要だと、権藤の口を突いてそう主張してくる。権藤は3年前に路上で尾崎を歌う女性に魅せられて、仲間達を集め、合唱部を結成していた。そしてソウルにひたすらこだわる。
最後は全国大会への予選会である。権藤らも予選に出場しようと会場に来たが、その髪形と服装から主催者が出場を許可しない。まあ、ここから先の記述は控えるが、そのままでは映画のストーリーは続かないので、どうなったかの想像はたやすいことだろう。
そして主人公の高校の出番。ピアノ伴奏が始まったところで早くも鳥肌が立った。出演者の緊張感と会場の雰囲気が映画でありながらリアルに伝わってきたからだ。見事な合唱だった。主人公はこうして歌うことの楽しさを改めて実感した。
キャスティング上の私のおすすめは合唱部部長、楓を演じる亜希子である。特に華のある存在ではないが、ちょっと気が強い感じの合唱部の部長として、いかにもリアルにいそうな感じが良い。これからの彼女の活躍に期待したい。
基本的に私は青春映画に対して甘い。しかし、その分を差し引いても良い映画と言える。既に公開を終了したところが多そうなので、DVDになった際にでも鑑賞されることをお薦めしたい。
<初出:秀コラム 第1491話 加筆修正>
2008年04月20日
四月物語
新作でなくて恐縮だが、この時期にあわせた「日本映画も結構良いじゃない」、という作品の話を一つ。タイトルは「四月物語」。主演は松たか子。大学の進学のために北海道から上京して来た女性の物語である。その大学を選んだ基準、アパートを決めた基準が高校のときに憧れていた先輩(田辺誠一)に会うためということだった。
桜の花びらが散る中をトラックが走り、彼女が引っ越して来るシーンが最初の方に出てくる。新しき生活、しかも先輩に会えるかもしれないという期待感が彼女の嬉々とした表情で表現されている。彼女の身の回りは新鮮なものであふれている。その日常がリアルに描かれている。桜の花びらが散るシーン、そして後半は雨の中に開く彼女の赤い傘。非常に美しい映像である。正味60数分と冗長的な部分も少ない。
憧れの先輩とは彼がバイトをしている本屋で出会える。好きな人と会った瞬間のそのドキドキ感、そのときの感情をあなたはまだ覚えているだろうか?。この映画の見どころはまさにここにある。そこを楽しむべし。春はそんな季節。